あまり経験することはなくても、実際に遭遇すると困ってしまう局面は人生にいくつか存在します。
その一つが、家計の大黒柱がなくなり、残された家族はどう葬式費用を捻出するか、という局面です。
今回から数回にかけて、そのような状況について説明していきます。
相続人の状況
相続が開始されると、死者を弔うための葬儀が行われます。
それに要する費用は、個人や遺族の社会的地位であったり、地域の慣習等により差異はあるものの、総じて多額になります。
また、支払い時期も相続開始から日を置かずに発生します。
相続人としては、多額の葬儀費用を被相続人名義の預金の払戻しを受けて、充足したいとのニーズが発生します。
ところが、この時期に払戻しを受けることは不可能に近いです。
やることは多いです。
・法定の手続き通りに相続人を確定するための戸籍情報の収集
・遺産分割協議の成立
そのため、共同相続人の一部からの払戻し請求となることが多いのです。
金融機関の立場に立つと?
金融機関は、リスク判断のもとで便宜を計らい、対応することになります。
現在、相続預金は遺産分割の対象とされています。
これは、平成28年の判例変更より前は、可分債権として法定分割継承されるものでした。
つまり、相続開始と同時に各相続人がそれぞれの相続分に応じて分割して取得されるものだったのです。
そのため、払戻し請求者の相続分の範囲内であれば、事実上リスクなしでした。
しかし、現在は、遺産分割協議の結果によっては、払戻し請求者が預金を相続しない場合もでてきました。
そのため、金融機関はリスクの負担が必要になったのです。
どのようにすれば払い戻せるか
相続開始後の相続人は、総じて心情が不安定です。
特に葬儀費用支払いに関するニーズは強いものです。
加えて、個人が死を迎える場所が病院であれば、入院費用が発生します。
入院費の支払いについても、葬儀費用と同じ問題が発生する可能性が高くなります。
払戻しを受けるためには、金融機関のリスクを減らすほか、ありません。
・相続人が金融機関の店の営業圏内に居住する
・従前から取引関係にある
・遠方居住者であっても、社会的立場などから後日の修正に確実に応じてもらえるとの確信が持てる相続人が請求する
・全ての相続人の確定が不可能であっても、極力多くの相続人からの賛同を取り付ける
・病院や葬儀社発行の請求書を確認し、それらの金融機関の口座への振込みとする
結局は上記のいくつかを総合して、金融機関がリスク判断をすることになります。
今回のまとめ
葬式費用にあてるために預金を払い戻したいときの状況について説明しました。
金融機関は払戻しにリスクを負います。
そのため、払戻し請求者がいかに金融機関のリスクを低減することができるかが大切です。