普段発生確率は低くても、実際にその局面に遭遇すると困ることをとりあげています。
めったに発生しない出来事といっても、一旦起こってしまえば現実を受け入れて対処するしかありません。
遺言の効果
遺言書による遺産処分の指定は、遺言書が有効な者であれば、相続人などに対して拘束力を持ちます。
例外的に、遺言内容に第三者への遺贈が含まれていない場合で、共同相続人全員の合意した場合があります。
そういうときは、遺言内容とは異なる内容で遺産分割協議を成立させて、遺言書に従わないこともできます。
例外はあるものの、相続人は原則として遺言書に従う義務がある、ともいえます。
遺言書として効力を持たせるためには、遺言書としての法的要件が満たされている必要があります。
しかし、法的要件に不備があるというケースもあります。
そういった瑕疵のある遺言書の場合は、その効力についてどうなんだろう?と問題視されることがあるのです。
問題になる遺言書
前述の遺言書の法的要件不備の問題ですが、公証人が作成した公正証書遺言について問題視されることはありません。
しかし、遺言者自身が作成した自筆証書遺言については、その内容の瑕疵について問題になります。
自筆証書遺言は、以下のような多くの要件を満たす必要があります。
・全文自筆
・作成日付の記載がある
・遺言者の署名・捺印があること
・加除・変更場所の指示、変更した旨の付記・署名、変更場所への押印
・2人以上の者による同一証書での作成禁止
・家庭裁判所による検認
このうちのどれかが満たされていなければ、法的要件を満たしていない、とされます。
自筆証書遺言での欠陥で、最も多く見られるのは正しい訂正方法によらないことです。
内容を加えたり、内容を削除した部分に、署名または捺印がない、といったものです。
金融機関の対応
金融機関は、このような法的要件を満たしていない自筆証書遺言の提示を受け、遺言内容で預金を取得したとされる相続人からの払戻し請求を受ける場合もあります。
金融機関の立場では、その有効性を積極的に判断することはできません。
つまり、大抵の場合有効なものとして手続きをとることはできないのです。
自筆証書遺言に求められる家庭裁判所による検認手続きは、単に遺言書の状態を保全するだけのものです。
その法的有効性を充足する証明手続きではありません。
この点を誤解している相続人もいます。
結局のところ、有効性判断について司法判断を求めるように勧めるという対応をとらざるをえません。
または、全相続人に欠陥の内容を伝えた上で、それでも遺言者の遺志を尊重し、遺言内容通りに処理することに異議がないかを照会するぐらいなのです。
今回のまとめ
自筆証書遺言に欠陥があった時の場合を説明しました。
これといった解決策がないのが実情です。
一旦、共同相続人全員の合意をもって預金を払い戻す、という対処のしかたが考えられます。