前回は、不動産経営の難しさについて説明しました。
賃貸物件の実力は、築10年を超えてからが勝負です。
「新しい」という肩書きがなくなり、それでも入居者から選ばれるためには、その物件に何らかのメリットがなければいけないのです。
加えて、不動産ならではの流動性が問題になる難しさもあります。
物納という手段
上記で紹介した事例では、資産はあるが、現金がないという状況でした。
しかし、相続税を納めるためには何とか資金化をしなければなりません。
任意売却と同時に物納という手段もあります。
物納するためには、担保権が付されていない物件である必要があります。
銀行から融資を得る際に、抵当権を土地や建物に登記して担保にします。
もし、返済が滞ってしまうと銀行は担保である不動産を競売し、その代金を自己の債権の弁済に充てるのです。
また、賃貸物件では、オーナーには敷金返還債務があります。
借り手が入居時に払った敷金を、退去時には原状回復にかかった費用を差し引いて返還しなければいけません。
そこにも、まとまった金額が必要になります。
しかも、借り手は借地借家法で保護されている立場になります。
期間の定めのある賃貸借の場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、更新をしない旨の通知をしなければ、契約は法定更新されます。
ただし、オーナーがこの通知を行うためには、6ヶ月以上の予告期間が必要と考えられます。
加えて、解約には正当事由も必要となります。
時間的な制約もあります。
このように、賃貸物件は物納という手段を諦めざるをえないケースが多いです。
任意売却という手段
入居者がいる状態のまま、賃貸物件を売却するという任意売却による方法で資金化することも手段の1つです。
そのような物件は、利回り物件として査定されることになります。
つまり、利回りが高い物件として、価格が安い物件が好まれます。
このような状況は高く売りたい売主としては辛い立場になります。
相続税申告期限までに資金化する必要がある売却活動は、特に売主の立場が弱くなります。
交渉ごとは時間が限られてくると、買主に足元を見られ、低く指値を入れられがちになります。
時間に余裕がある時ならまだしも、申告期限が迫っている状況だと背に腹は変えられないと相手の条件を呑まざるを得ない状況にもなり得ます。
今回のまとめ
賃貸物件の資金化の難しさについて説明しました。
紹介している事例では、節税と納税資金のバランスに配慮し、長期的な視点が必要です。
特に交渉ごとは時間に制約があると弱い立場になります。
参考になれば幸いです。