相続は、ある日突然やってきます。準備万端で迎えられることは、ほとんど存在しません。いざという時に困ることの無いように、自身が相続する内容と手続き方法を確認しておくことが重要です。
今回は「不動産の相続」に焦点を絞り、「費用と税金」「不動産相続の方法」を解説します。
不動産相続の流れ
不動産を相続する人間が1人だけの場合を「単独相続」と呼びます。この場合は遺産分割協議などが不要なため、スムーズに相続登記が終了します。
一方、2人以上の場合には「遺言の有無を確認」を行うほか、遺言がなければ「遺産分割協議」を行って遺産分割協議書を作成しなければなりません。
遺言の確認・遺産分割協議
2人以上の相続人が要る場合、最初に「遺言」の有無を確認します。見つかった遺言に不動産に関する記載があれば、その内容に従って相続人が決まります。
遺言がない場合に、相続人全員で行うのが「遺産分割協議」です。不動産は現金と違って2つに分けることはできないため、「どの不動産を誰が相続するのか」を明確にしておく必要があります。
なお、正確には、相続が発生した段階で、不動産は「相続人全員の共有持ち分」となります。そこから、誰が受け取るかを分割協議で決めていくのです。
相続登記
遺言または遺産分割協議によって相続人が決定した後に行うのが「相続登記」です。相続登記を行うことによって、不動産の登記名義を被相続人から相続人へ変更します。
必ず行わなければいけない手続きですが、特に期限が定められてはいません。20年後、30年後に相続登記を行ったとしても有効です。
ただし、放置することにより問題が発生する可能性があります。
例えば、「他の相続人が勝手に不動産を売却してしまう」ケースです。相続登記によってはじめて「この不動産の名義は〇〇である」と第三者に証明できるため、所有者が故人のままでは誰が現在の所有者か判断できないのです。
さらに「追加で相続が発生した場合」に、手続きが大変になる点も問題です。祖父が死亡して子が相続した不動産を相続登記せず放置している場合、子が亡くなって孫が相続するさいに「祖父→子への相続登記」と「子→孫への相続登記」の両方を行わなければいけません。
不動産相続の税金・費用
相続の際には、相続税をはじめ、さまざまな税金・費用が発生します。
相続税
人が死亡して財産を移転する際に「富の再配分」を名目に徴収されるのが「相続税」です。しかし、相続をした全ての人が払う必要はありません。
相続税には「基礎控除」と呼ばれる仕組みがあり、「遺産総額」がそれ以下で収まる場合は相続税は非課税となります。
【基礎控除の計算式】3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
仮に相続人が2人だった場合、「3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円」が基礎控除額です。
遺産総額が4,200万円を超えた部分にのみ、相続税が発生します。
登録免許税
登記手続きをする際に、国に納めることになる税金が「登録免許税」です。これ納付しないと登記申請は却下されてしまいます。
登録免許税の算出方法は以下の通りです。
不動産の課税価格×0.4%(1,000円未満は切り捨て)
「不動産の課税価格」は、管轄する市町村で発行されている「固定資産評価証明書」に記載されています。
なお、平成30年の税制改正により、一定の条件を満たすと登録免許税が免除されることになりました。
AさんからBさんに土地が相続され、続いてCさんに相続された時に、Bさんが相続登記を行わないまま死亡した場合、まず「Bを土地の所有者にする」手続きが必要です。
今回の税制改正で、この「Bさんを所有者にするための登録免許税」が免除されます。
書類の取得費用
相続登記では以下のような書類を用意する必要があり、その発行に必要な手数料も費用の計算に入れておく必要があります。
【相続登記時に必要になる資料】
- 相続人全員の戸籍謄本(被相続人死亡日以降に発行)
- 相続人全員の印鑑証明
- 被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まで一連する全て)
- 被相続人の住民票の除票(本籍の記載が必須)
- 遺産分割協議書
- 不動産の登記事項証明書
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 不動産の固定資産評価証明書
必要書類に関する発行手数料については、法務省のHPも併せて参照してください。
専門家への報酬
登記は自分で行うこともできますが、審査は厳格なため手続きに手間と時間がかかります。もちろん、不備があると受け取ってもらえません。費用がかかったとしても、専門家に依頼したほうがスムーズで確実です。
相続登記を司法書士に依頼する場合、「5万円~10万円」程度が相場と言われています。
不動産の分割相続の方法
不動産を相続する方法は、「現物分割」「共有分割」「代償分割」「換価分割」の4つの方法があります。それぞれ適した状況が異なるため、それぞれの遺産分割の状況から適切な手法を考える必要があります。
現物分割
文字通り不動産を分割して分ける方法です。土地を相続した場合に、細かく分割しても利用価値を損なわない場合に利用できます。
ただし、土地が小さすぎる場合は利用できません。
共有分割
遺産分割協議の状態(全員で共有)の状態のままにしておくことです。遺産分割協議のテーブルから外れるため、話し合いの手間を減らすことができます。
ただし、共有にした場合は「修繕や売却には全員の同意が必要になる」というデメリットがあります。
結果的に処分や有効活用ができない可能性が残るため、おすすめできる方法ではありません。
代償分割
不動産を相続した人が、残りの相続人へ代償(多くの場合は現金)を支払う方法です。不動産の相続人が決まっている場合に有効ですが、1人の現金負担が大きくなる問題があります。
不動産の価値が高い場合、相続した人が払う金額も高額になってしまいます。
換価分割
不動産の一部、または全部を現金に換える方法です。現金は等分にしやすいため、誰が不動産を相続するのか決まらない場合に利用できます。
ただし、「不動産を今の形で残すことができない」「売却手続きに時間と手間がかかる」といったデメリットもあります。
まとめ
今回は、「不動産を相続した場合の流れ・費用」について解説しました。
不動産は現金と違い、細かく分けて相続するのが難しい特性があります。遺産分割協議で揉めることが予想されるため、被相続人が元気なうちに「誰が相続するのか」を話し合っておきましょう。
実際に相続したら、すぐに登記の手続きに移りましょう。