通常の相続では、亡くなる人の配偶者や子供が「法定相続人」として財産を分け合います。しかし、場合によっては亡くなった人の遺言によって、法定相続人以外に財産が渡ることもあります。
今回は、相続における「遺贈」について解説します。
遺贈とは
遺贈とは文字通り「遺言を贈与すること」、つまり遺言によって財産を無償で提供することを指します。
通常の贈与は、財産をあげる人ともらう人の同意によって成立するしますが、遺贈はの場合は遺言者側の一方的な意思表示で成立します。
また遺贈は、遺言者の死亡によって初めて効力を発揮する点が贈与と異なります。
遺贈登記とは
不動産が遺贈された場合、名義変更のための登記が必要です。
通常の登記と異なり、受遺者と法定相続人、あるいは遺言執行者との共同で登記を行う点に違いがあります。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、文字通り遺言の内容のとおりに相続が進むように執行する人のことです。なぜ、遺言執行者が必要なのでしょうか。実際の相続を思い浮かべてみると分かりやすいです。
もし、相続で得られるはずだった不動産を別の第三者に遺贈する遺言が見つかったとしましょう。
通常は「面白くない」と感じるはずです。
本来の相続人から登記申請の協力が得られず、登記が遺言のとおりに進まなくなる可能性があります。
そこで、遺言を作成する際は、あらかじめ「遺言執行者」を選んでいるわけです。
相続人以外の人を受遺者(財産の遺贈を受ける人)にする場合は特に重要になります。
遺贈登記の進め方
遺言書に不動産の遺贈する旨が書かれていた場合、財産をもらった受遺者の名義になるように不動産名義を変更する所有権移転登記が必要です。
遺贈登記の進め方のポイントを紹介します。
被相続人の死後10ヶ月以内に行う
遺贈登記は、法的に期限が定められているわけではありません。死後10ヶ月以内に手続きするのがベストです。
なぜかといえば、もし更なる相続が発生した時に手続きが複雑になることが考えられるからです。
相続税の申告期限を過ぎてしまうことで余分に税金を払うこともあります。
相続税の支払い期限に合わせ、死後10ヶ月以内を目標に遺贈登記を行うのが良いでしょう。
不動産の地区を管轄する法務局で申請
遺贈登記の申請は、不動産のある地区を管轄する法務局で行います。
序在地が違う不動産をいくつも遺贈された場合、不動産ごとに別々の法務局で手続きすることになります。
受遺者と相続人が共同で手続きする
遺贈登記のポイントになるところです。
遺贈登記は遺言執行者が共同で手続きを行う必要があります。
万が一遺言執行者が指定されていなかった場合は、受遺者と相続人全員が協力して登記申請を行うことになります。
相続登記と手続きが異なる
一般的な相続登記の場合、登記の申請人は相続人のみです。遺産分割協議書への捺印は相続人全員の協力が必要がありますが、実際の登記申請は相続人だけで行います。
一方の遺贈では、不動産を取得した受遺者と相続人の共同での申請を行うのが特徴です。
登録免許税にも違いがあります。
遺贈による所有権移転の登録免許税の税率は、贈与と同じ固定資産税評価額の2%です。
一般的な相続登記の場合は0.4%のため、じつに5倍もの開きが出ることになります。
遺言の内容に問題がある場合
遺言によって法定相続人に遺産を相続させるためには、「~を相続させる」という文面であることが必要です。
しかし、自筆証書遺言の場合は誤って「~を遺贈する」と書かれてしまうケースがあります。
この場合は受遺者である法定相続人と、遺言執行者の共同申請が必要になります。
例外として、「遺贈する」と書かれていて、財産の処分を受ける人が相続人全員である場合には遺贈という文言だったとしても相続登記になります。
まとめ
今回は、遺贈で不動産を相続した場合の遺贈登記について解説しました。相続人と受遺者の共同での登記になるため、何かしらのトラブルが起こることも考えられます。
遺言執行者がいないくても登記できるように、普段から親族間でのコミュニケーションが大切になるでしょう。