前回は、資産家であっても納税資金に困るという事例に対し、どのようにすれば良かったのかについて説明しました。
事例で紹介したAさんは、地主です。
金融資産より、不動産の割合が多い、というケースは珍しいことではありません。
借金は相続対策になるか
相続税対策ではなぜ借金が有効と言われているのでしょうか。
相続では、プラスの財産に加えて、マイナスの財産である借入金も相続することになります。
相続財産の評価をするとき、プラスの財産もマイナスの財産も合わせて評価します。
当然、プラスの財産より、マイナスの借入金などが多くなるケースもあります。
そのときは、借金を背負ってしまいますが、相続税は課税されません。
つまり、相続税の課税対象財産から借金の額を差し引くことができるので、その分課税される相続税の額も借金の分だけ少なくなるのです。
例えば1億円の財産があり、1億円の借金がある場合、相続税の課税対象財産は0です。
しかし、借金をすると当然、マイナスの財産も増えますが、手元の現金も増えてしまいます。
賃貸物件が相続対策になる条件
借金をした分、手元に現金が増えることになります。
現金は、あればあるだけ、相続税の課税対象としてカウントされていきます。
しかし、現金を不動産に変えることで相続税の課税対象となる財産を抑えることができるのです。
不動産の価値は様々な評価方法があります。
売買価格、路線価、固定資産税評価額など、一つの土地が尺度を変えることで様々な評価をされるのです。
不動産の価格と言われてまず思い浮かべるのは市場で流通している売買価格です。
そして、不動産の相続税の評価は原則、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価されます。
路線価や固定資産税評価額は時価よりも低いことが多いのです。
そのため、現金を不動産に変えることで相続税評価を抑えることができるのです。
一般的に相続税評価額は土地の場合、売買価格の80%程度であるとされています。
また、建物は建築時価の50%から70%程度で評価されます。
さらに、建物の価格は第三者に賃貸することで30%控除されます。
このように評価のされ方の差が相続税対策になるのです。
今回のまとめ
今回は、現金が不動産に形を変えることによって、評価額が時価よりも低いことが多い不動産が相続税対策になる背景を説明しました。
次回は、不動産による相続税対策の難しさについて説明します。