こんにちは、駆け出しファイナンシャルプランナーのmasa01です。
被相続人(亡くなった人)が書いた遺言によって本来もらえるべき財産がもらえない事態が発生したとき、権利を取り戻す方法があるのをご存知ですか?
実は、相続において「父の遺言で兄に財産を持っていかれた!」というような事態でも、一定の期間内であれば手続きによって一部を取り戻すことができるのです。
今回は、相続トラブルの1つ「遺産分割の割合」にスポットを当てて解説していきます。
遺留分とは|相続の時に最低限もらえる割合のこと
相続によって遺産を分割する時は、法律で定められた「法定相続分」に沿って分割するのが基本です。
一方で、被相続人が有効な遺言(いごん・ゆいごん)を残していた場合は、遺言の中に書かれている割合が法定相続分に優先します。民法の規定では、『法定相続分は遺言によって排除できる』と規定されているためです。
2人の子(Bさん、Cさん)を持つAさんが亡くなった時に、「財産は全てBに相続させる」と書いてあった場合を例にしてみます。
この場合、本来は半々に分割する法定相続分より、遺言の内容が優先されるのです。
ただし、これでは財産をBさんにもっていかれたCさんの生活が成り立ちません。そこで登場するのが『遺留分』です。
遺留分は強行規定であり、遺言の内容よりも優先されるという決まりがあります。
そのため、Cさんは自分の遺留分を主張して自分の最低限の取り分を取り戻すことができます。
遺留分を侵害している遺言でも有効
ここで気を付けたいのは、「遺留分を侵害している遺言であっても無効の主張はできない」ということです。
先ほどのCさんとしては「兄弟2人で父の世話をしてきたのだから、このような遺言は無効だ!」と主張したいところですが、このように主張することはできないということです。
最低限の割合を取り戻すためには、遺言より更に優先度が高い遺留分を活用するほかありません。
配偶者・子供・親が持つ遺留分の違い
最低限の取り分が定められた「遺留分」ですが、被相続人との関係によって保証された割合に違いがあります。
配偶者・子供・親が持つ遺留分の違いをまとめました。
- 配偶者のみ=法定相続分の1/2
- 子供のみ=法定相続分の1/2
- 直系尊属のみ(親)のみ=法定相続分の1/3
- 配偶者と子=法定相続分の1/4ずつ
- 配偶者と直系尊属=配偶者が法定相続分の2/6、直系尊属が1/6
なお、子供や直系尊属が複数いる場合は、遺留分を人数で均等に分割します。
兄弟姉妹・相続放棄した人には遺留分が認められない
先ほどの遺留分に兄弟姉妹が載っていないことに気が付きましたか?
実は、残念ながら兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
そのため、『亡くなったAさんの相続人が兄弟のB、Cさんの2人しかいない』という状況の場合、B、Cさんに全く財産を残さないという遺言でも有効になってしまいます。
元々は相続人であったのに権利を放棄した人(相続を放棄した人)も同様です。
「私は財産は必要ありません」と宣言したのですから、遺留分が認められないのは当然と言えます。
遺留分の計算方法
遺留分の割合が分かったら、実際に遺留分がいくらになるのか計算してみましょう。
相続財産が500万円あること仮定します。
- 配偶者のみ、もしくは子のみ=500万円×遺留分割合1/2=250万円
1人しか相続人がいないため、本来であれば全額を1人で相続しているはずです。そこに遺留分の1/2をかけた500万円が、遺言の内容に関係なくもらえる最低限の金額になります。
- 父母のみ=500万円×遺留分1/3=166.6万円(人数で均等に割る)
父母の場合の遺留分は、子や配偶者と違って1/3です。そのため、1人の場合は166.6万円、2人の場合は83.3万円が遺留分になります。
- 配偶者と子=500万円×法定相続分1/2×遺留分割合1/2=125万円
相続人が配偶者と子の場合は、本来の法定相続分と遺留分の両方をかけたものが最低限もらえる金額です。この場合はそれぞれ125万円が遺留分になります。
- 配偶者と直系尊属
- 配偶者:500万円×法定相続分1/2×遺留分割合2/3=166.6万円
- 直系尊属:500万円×法定相続分1/2×遺留分割合1/3=83.3万円
考え方は今までと同じです。ただし、直系尊属の遺留分割合は他と違って1/3である点に注意してください。
遺留分を取り戻す|遺留分減殺請求権とは
遺留分が侵害された遺言が見つかった際に、「まあ遺留分があるから最低限は貰えるだろう」と思っても、それだけでは遺留分の金額をもらうことはできません。
侵害された遺留分を取り戻す意思表示を、相手方に対して行う必要があります。
この意思表示を【遺留分減殺請求権】といいます。
遺留分減殺請求権の手続き方法
遺留分減殺請求権の意思表示には、何をしなければいけないという決まりはありません。メールや手紙のような形に残る形はもちろん、口頭で直接伝えても有効です。
ただし、すんなりと話し合いで解決できる時ばかりではありません。
「父さんは私に財産を残してくれたのよ!返す気なんかないわ!」
このようにトラブルに発展するケースも多いです。こうなったら裁判所での手続きで取り戻すことになるため、一般的には内容証明郵便で意思表示を行います。
まずは内容証明郵便で遺留分減殺請求の意思表示を行い、当事者同士で話し合いを行います。ここで話が終われば、遺留分を相手方から貰って話は終了です。
まとまらない場合は、裁判所に『遺留分減殺請求調停』を行い、それでも話がまとまらないようなら『遺留分減殺請求訴訟』に進みます。
遺留分減殺請求権の時効
遺留分減殺請求権は、いつまでも権利として持っていられるわけではありません。以下の起源を過ぎると行使できなくなります。
- 贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間
- 相続が開始された時から10年間
まとめ
今回は、遺留分の基本とお金の取り戻し方の流れを解説しました。
遺言に優先される強力な「遺留分減殺請求」ですが、時効がある事を忘れてはいけません。
また、そもそも遺留分を侵害される遺言が遺されないように、日頃から親子のコミュニケーションを大切にしていきましょう。