こんにちは、駆け出しファイナンシャルプランナーのmasa01です。
皆さんは、税務には判断があいまいな部分(グレーゾーン)があることをご存知ですか?
税務署の判断1つで思いもよらない課税をされてしまい、数百万円も納税額が変わってしまうことがあるのです。
今回紹介するのはは、妻名義の預金(へそくり)が『実質的に亡くなった旦那のものである』と認定され、裁判にまでもつれ込んだ事例です。
世の女性の多くに当てはまる判決ですから、まずは最後まで読んでみてください。
判決の概要(平成19年10月4日 国税不服審判所の裁決)
・亡くなった人(被相続人)の名前をAさんとします。
・Aさんの財産を相続したのた、妻であるBさんと、子であるCさんです。
さて、Bさんは夫から貰った生活費をやりくりし、のこったお金をへそくりとして預金に回していました。
自分の名義ということで、相続税の申告の時にへそくりを含めずに申告していたのです。
その後、税務署の調査が入って驚くことが起きます。
Bさんの預金が亡くなったAさんの財産と税務署が認定し、相続税を追徴課税されてしまったのです。
当然Bさんはこれを不服として『国税不服審判所』に訴えました。
「Aさんの了解を得て生活費をやりくりした結果の預金(へそくり)である」
「贈与税の申告はしていないが、Aさんの了解を得てもらったもの」
「Aさん名義とBさん名義の預金の解約日が異なっている(別々に管理していたから)」
このような主張を展開したBさんでしたが、裁決の結果は『預金はAさんの相続財産として、相続税を追徴課税する』というものでした。
なぜ、Bさんの主張は退けられてしまったのでしょうか。
自分のものであっても、相続税の対象になるお金がある
今回のBさんのへそくりのように、名義はBさんでもAさんの財産であると認定されてしまう場合があります。
Aさんのお金をBさんやCさん名義の通帳に入れたとしても、それだけではBさんやCさんの財産とは認められないのです。
これを『名義財産』といいます。
他人(Dさん)の家の庭に生えている木に、たとえ所有者の了解を得て名前を彫ったとしても、真の所有者はDさんのままなのは明白です。少し極端でしょうが、今回の事例もこれと同じ考え方と思ってください。
つまり、表面的な名前は関係なく、『本来の所有者は誰なのか』という点で税務署は調査している、ということです。
税務署が重視するポイントは【お金の出どころと管理体制】
それでは、何をもって『真の所有者』を判断するのでしょうか。
大切なのは、『お金がどこから生まれたものか』と『誰がお金を管理していたのか』という点です。
今回の裁決で言えば、Bさんは専業主婦でお金を稼いでいませんでした。
つまりお金の出どころが夫のAさんであることは明白です。
また、預金の詳細が書かれたメモ書きが見つかったのですが、筆跡がAさんのものでした。
Bさんは「2人で書いたもの」と主張しましたが、裁決ではAさんが管理していた、と判断されてしまいました。
お金の出どころも管理者もAさんと認定されたことで、今回の判決につながったのです。
追徴課税の場合は特例が使えないことも
「結婚しても、財産は全て夫のものになってしまうの?」
こう思ってしまわれるかもしれませんが、そんなことはありません。生前贈与の形をとれば、その財産は贈与を受けた人のものになります。
のちのち確認された時のために贈与契約書を作成し、1年で贈与額が110万円を超えるようなら贈与税の申告も必要です。
そもそも、配偶者は被相続人が亡くなったあとの生活を守るための特例があります。
『配偶者の税額軽減』と呼ばれる制度で、配偶者が相続する財産は最低1億6千万円まで非課税になります。
ただし、税務署の調査が入って被相続人の財産が発覚した場合、この特例が使えなくなってしまう可能性があるのです。
正直に申告したとしても税金がかからないことが大半ですから、最初からAさんの財産として申告してしまったほうが良いと言えます。
自分で作ったお金を貯金するなら問題ない
今回の事例は、夫(Aさん)が出どころのお金のために、このような判決となりました。
かといって妻の財産は全て夫の名義になるわけではありません。最初からBさんのお金であればいいのです。
例えば、自分で働きに出て稼いだお金や、結婚前に貯金していたお金、自分の両親から相続で受け取ったお金等がこれにあたります。
まとめ
今回は、妻のへそくりが税務署の調査で夫のものであると認定された裁決について解説しました。
税務署が調査の際に所有者を判断するポイントは、以下の通りです。
- お金はどこから出てきたものか(誰がつくったお金か)
- 誰が管理しているのか
- 生前贈与は行われたのか
管理しているメモ帳が見つかった場合は、その筆跡が重要になります。夫の筆跡で書かれたメモ帳であれば、預金は夫のモノと判断されるでしょう。
課税されずにお金を受け取るなら、贈与契約を交わしてお金を受け取り、必要に応じて贈与税の申告を行うことです。
第三者がみて所有者が妻に移っているという証明ができることが大切です。