こんにちは、駆け出しファイナンシャルプランナーのmasa01です。
早速ですが、ここで皆さんに質問させてください。
円満な相続を実現するために、最も大切なことは何でしょうか?
答えは、【生前に遺言を作っておく】です。
遺言を作れば、故人の遺志を明確にできます。また、遺産分割協議書を提出できれば【小規模宅地の特例】などの特例を利用することも可能です。
遺言を作成することで、心理的にも経済的にも円満な相続に近づけることができるのです。
今回は、遺言の作り方の基本と、無効になってしまうNGな書き方を解説していきます。ご自身の相続に向けて、まずは目を通してみてください。
遺言は大きく分けて2種類
遺言の作り方には、大きく分けて2つの手段があります。
自分で遺言を作成する【自筆証書遺言】と、プロの公証人が遺言を作成する【公正証書遺言】です。(秘密証書遺言もありますが、実務ではほぼ選ばれないため今回は割愛します)
それぞれの方式の特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、文字通り本人(相続する側)が自筆で書く方式のことです。
偽造防止の意味もあるため、ケガであっても病気であっても代筆は認められていません。本人な元気なうちに、遺言の作成を進めなければなりません。
公正証書遺言と比べ、以下のような特徴があります。
- 遺言は本人が保管する
- 裁判所での確認手続き(検認)が必要
- 作成に費用が必要ない
紙とペン、印鑑さえあれば誰でもいつでも作れる手軽さがメリットです。
一方で本人が手書きをするため、間違いによって無効になりやすいデメリットがあります。そのほか、【検認に時間がかかる】【他者による改ざんの可能性がある】【相続の時に見つからない(紛失)の可能性がある】など注意点が多い方式でもあります。
検認は遺言の有効性を審査するものではない
【検認】とは、家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人立会いの下で中身を確認する手続きのことです。
間違いなく遺言が用意されたことを確認する手続きで、遺言の偽造を防止する効果があります。
相続人側で大切なことは、検認前に遺言の封を開けてはいけない点です。遺言が無効になることはありませんが、5万円以下の過料に処されるケースがあります。
またよく勘違いされることがありますが、検認をしたからといって遺言が有効と証明されるものではありません。
明らかに不備がある遺言書ではないのなら、無効を主張するには裁判所に『遺言無効の訴え』を提起する必要があるのです。
法改正で一部ワープロソフトでの作成が可能に
本人が自筆するというのが条件の自筆証書遺言ですが、2019年1月13日施工の法改正により、一部でワープロソフトでの作成ができるようになりました。
それは『財産目録』の部分です。
また、不動産における登記簿全部事項証明書等を別紙目録として添付することも可能になりました。
これによって、自筆証書遺言のハードルは下がっていると言えます。
2020年から一部の自筆証書遺言で検認が不要に
検認についても、法改正で緩和されている部分があります。
2020年7月の法改正により、『遺言保管所』で保管されている試筆証書遺言については検認が不要になります。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言は、遺言に詳しくない素人でも気軽に書ける方式です。よって、間違いによって無効になることもあります。
正しい書きかたをマスターし、円満に手続きが進むような遺書を作りましょう。
使用する紙の材質は問わない
紙に本人が直接書いていく方式ですが、使用する紙の材質はどれでも構いません。基本的には便箋ですが、A4プリント用紙であっても有効です。
ただし、書く方は鉛筆ではなくボールペンや万年筆にしてください。消えるもので書くと、のちのち偽造などのトラブルに発展しかねません。
財産を渡すことは『相続させる』と書く
相続の内容を遺言書に書く時に、あいまいな言い方は誤解の元になります。
必ず、明確で具体的な言葉を使ってください。例えば財産を渡すなら『相続させる』という表現が好ましいです。
『あげる』『引き継ぐ』というあいまい表現は避けてください。
作成した日付を入れる
遺言には、必ず【年月日】を記入してください。
よるありがちなミスとして『〇月吉日』という書き方をしてしまうパターンです。日付が特定できないため、この書き方では有効にはなりません。
誰に何を相続させるか具体的に書く
まず、相続する財産に何があるかを明確にしてください。
人に貸したり借りていたりと言った場合、本人以外では分からないことが多いです。また、実際には財産ではないものを書いてしまうとトラブルに発展します。
続いて、誰に何を、どのくらい相続させるかを明確に記載してください。
『長女は自分の介護を頑張ってくれているから、長男より多く残したいなあ』と思っているのなら、【長女に〇万円を相続させる】と具体的な数字を書くのです。
『長女に多く残します』では具体性がなく、新たな争いが生まれることもあり得ます。
署名をする
遺言の最後に、本人のフルネームを記載します。本人と特定できるならペンネームも可能ですが、余計なトラブルを防止するためにも本名をフルネームで書くことをおすすめします。
遺言が無効になる書き方
前項で紹介した【自筆証書遺言の書き方】に沿っていない遺言は、無効になる可能性があります。
具体的には、以下のような遺言のことです
- 自筆ではない
- 日付がない
- 署名されていない
- 変更が所定の様式でない
- 連名で遺言を書いている
特に注意すべきは4と5です。
遺言で書き損じた場合、適当に直してはいけません。訂正した場所に押印をして正しい文字を書き、どこをどのように訂正したのか記載して署名までしなければなりません。
また、2人以上が連名で遺言を作ることはできません。よくあるのが、『夫婦が連名で1つの遺言を作ってしまった』パターンです。
民法に『共同遺言の禁止』という項目があるから、遺言は1人の名前で作成しなければなりません。
公正証書遺言とは
自筆証書遺言と違い、プロである公証人が本人に代わって遺言を作成するものです。
自作する自筆証書遺言と違って、書き間違いによる向こうが発生しないのが大きなポイントです。また公証役場に遺言が保管されるため、紛失の心配もありません。
自筆証書遺言と比較して、以下のような特徴があります。
- 作成には公証人のほか、証人2人の立ち合いが必要
- 公証人が書くため、本人が字を書けなくても作成できる
- 検認が不要
作成の時に費用が発生すること、証人を呼ぶことから内容を秘密にできない点は要注意な点と言えます。
オススメは【公正証書遺言】
円満な相続を目指すなら、方式としては公正証書遺言を選択することをオススメします。
手軽に書くことができて費用もかからない自筆証書遺言ですが、書き方にミスがあったり紛失したりすると無効になってしまいます。せっかく本人が示した意思が、相続に反映されなくなってしまうのです。
一方で公正証書遺言であれば、費用はかかっても無効になる心配はありません。遺産分割がスムーズに終わることで節税の特例が使える点からも、結果的にトータルで得をすることも多いのです。
法改正により自筆証書遺言のハードルが下がっている点はありますが、やはり確実性を重視するなら公正証書遺言を使うほうが賢明です。
まとめ
今回は、遺言の概要と書き方の基本について紹介してきました。
故人の遺志は、有効な遺言があって初めて尊重することができます。
自筆証書遺言を作成する場合は、無効にならないように細心の注意を払って作成しましょう。今後も法改正で有効な書き方が変わることがあるため、最新の情報を調べておくことも重要です。
自筆証書遺言・公正証書遺言の良いところ・注意すべきところをしっかりと理解して、円満な相続ができる方法で遺言を作成していきましょう。