前回の記事では、孫は原則として法定相続人に含まれないことや、民法によって定められた相続分の割合を「法定相続分」と呼ぶことなどを紹介しました。
今回は、代襲相続以外で孫に財産を遺す方法について触れたいと思います。
代襲相続なら孫が法定相続人になれる
民法上、孫は法定相続人になっていませんが、代襲相続が発生すると孫が相続人になる場合もあります。
代襲相続とは、相続発生時に子が亡くなっていた場合、子が相続する予定だった財産を孫が引き継ぐ(代襲する)ことをいいます。
また法定相続人である子が、相続の欠格や排除になっていても代襲相続は認められています。
ただし子が相続放棄している場合の代襲相続は認められません。
代襲相続する孫が未成年者の場合
法律上、未成年者の判断能力は不十分とされているため、契約手続きなどの法律行為には法定代理人を選任する必要があります。
一般的に未成年者の法定代理人は親権者(親)になることが多く、身近な例では子供が使う携帯電話の契約などがあります。
ただし、遺産分割協議の際に親権者が子の法定代理人になることはできません。
理由は同じ相続人である子と利益相反関係になってしまうためであり、このようなケースでは家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。
一方、祖父母が亡くなったことによる相続において、すでに子(長男等)が亡くなっており孫が代襲相続する場合、子の妻(孫の母親)には相続権がないため利益相反も発生せず、法定代理人になることが可能となります。
養子の子は代襲相続できるのか
相続開始時に被相続人の養子が亡くなっていた場合、養子の子(被相続人からみた孫)がいれば代襲相続人になることができます。
ただし、養子の子の出生日と養子縁組のタイミングによっては代襲相続不可となる場合もあるので注意が必要です。
養子縁組をした後に生まれた養子の子は、被相続人の直系卑属になるため代襲相続が可能となります。
しかし養子縁組の前に生まれていた養子の子(連れ子)は直系卑属ではないため、代襲相続人になることはできません。
なお、連れ子が被相続人と養子縁組していた場合は連れ子が法定相続人となります。
代襲相続以外で孫に財産を遺す方法
代襲相続以外では、「遺贈(遺言書)」「生前贈与」「養子縁組」のいずれかによって孫に財産を遺すことができます。
遺言書で孫に遺贈する
遺言書では法定相続人ではない孫を相続人に指定することができます。
遺言書により、無償で自分の財産を分け与えることを「遺贈」といい、財産を受け継ぐ人を「受遺者」といいます。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類あり、財産の割合で相続させる方法を包括遺贈といいます。
現預金や有価証券などの特定財産ではなく、相続財産全体の何割を相続させるか指定する方法となっており、遺贈の中には負債の割合も含まれることになります。
包括遺贈とは逆に特定の財産を相続させる方法を特定遺贈といいます。
特定遺贈は口座を指定した銀行預金や特定の土地などを相続する場合に利用され、債務を承継するようなことはありません。
遺言書の種類は3つ
遺言書は作成方法によって以下の3種類に分けられ、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
「自筆証書遺言」は文字どおり遺言者自ら作成する遺言書です。
何度でも書き直しでき、費用もかからないため手軽に作成できますが、専門家の検認がないため要件不備として無効になる場合もあり、紛失や偽造のほか遺言書の存在に相続人が気付かないといったリスクがあります。
また封印されている自筆遺言証書は、相続人立ち合いのもと家庭裁判所で開封しなければなりません。
「公正証書遺言」は公証人が遺言書を作成し、公証人役場で原本を保管する方式になります。
紛失や偽造、隠匿といったリスクはありませんが、費用が発生し2名の証人(司法書士など)も必要となります。
「秘密証書遺言」は、遺言者自らが遺言書を作成して封印し、公証人役場で保管してもらう方法になります。
遺言内容を誰にも知られることなく、紛失、偽造、隠匿といったリスクも回避できますが、費用が発生し、遺言内容が検認されることもないので要件不備として無効になる場合もあります。
なお、秘密証書遺言はワープロやパソコンでの作成および代筆も可能であり、自筆証書遺言についても財産目録はパソコン等によって作成することが認められています。
もっとも安全な遺言書は公正証書遺言といえますが、自筆および秘密証書遺言は無効とならないよう自書による氏名や日付、押印など要件を満たした内容となっているか入念なチェックが必要です。
孫へ生前贈与する
生きている間に孫へ財産を贈与(生前贈与)する方法もあります。
1年間に110万円までの贈与であれば非課税(期間は1月1日~12月31日)となりますし、通常必要と認められるものであれば教育費や生活費としての贈与も非課税になります。
また30歳未満の孫へ教育資金の一括贈与をした場合も、1,500万円の非課税枠を利用できます。
孫を養子にする
養子縁組することで孫を第1順位の法定相続人にすることもできます。
普通養子縁組する場合、孫が未成年であれば家庭裁判所の許可を必要としますが、成年の場合は役所への届出のみで養子縁組が成立します。
まとめ
今回は、代襲相続以外の方法で孫に財産を遺すための手続きなどについてみていきました。
孫に遺産を残したいと考えている方の参考になれば幸いです。
次回は、孫に財産を遺す際のトラブル事例などを紹介したいと思います。