今回は、預金債権以外の相続手続きを取り上げます。
相続開始した際に、預金債権だけでなくそれ以外の多種の金融商品が相続手続きの対象となることも珍しくありません。
金融商品の相続手続き
金融商品のうち、被相続人を被保険者とする生命保険契約については、保険金受取人があらかじめ指定されています。
そのため、相続開始により保険事故が発生した後はこの保険金受取人が保険会社に連絡を取り、保険金の給付手続きを行うことになります。
一方、金融機関が保有する国債などの場合です。
長期国債、公募地方債、個人向け国債などのことですが、それらの相続手続きも基本的には預金の場合と同じです。
つまり、遺言書による指定または全相続人による遺産分割協議の結果、それを取得することになった相続人との間で手続きすることになります。
投資信託についても同様です。
ここでバックグラウンドとなる判例を紹介します。
複数の相続人による共同相続の対象とされる預金債権については、最高裁によって法定分割承継を否定する判例変更がなされました。
投資信託や個人向け国債については、いずれももっと早い時期に法定分割承継を否定する判例がなされています。
そのような結果、預金を含む金融機関が取り扱う商品は、事実上すべて「遺産分割の対象とする」ことに統一されました。
つまり、預金の相続手続きで解説している内容に準じて手続きをすれば良いことになります。
価格変動の注意点
ところで、円建ての預金債権は元本が変動することはありません。
しかし、外貨預金は為替相場変動によって円換算額に変化が生じます。
また投資信託は日々変動する基準価格により元本額に変化が生じます。
国債についてはその変動幅は比較的小さいものの、市場金利の変動による影響を受けます。
これらの金融商品が相続手続きの対象とされる場合は注意が必要です。
取引の相手方が適法であることはもちろんです。
そのうえ、手続き可能な条件などにつき誤解が生じ、手続きが理由なく遅れる事態を避けなければなりません。
万一そのような事態が発生し、その間に基準価格や市場金利に大きな変化が生じた場合、相続人の受け取るべき金額が減少したりします。
その結果、損害賠償問題が生じたりします。
この点は預金債権と大きな相違ですので、金融機関は迅速で適法な対応が求められるのです。
まとめ
国債、地方債、投資信託なども基本的には預金債権と同様、遺産分割の対象となります。
そのため、相続手続きも預金債権と同じになることについて説明しました。
その中で、日々の経済状態によって価格が変動する要素がある金融商品は注意が必要です。
もし万が一金融機関の対応が遅れるようなことがあれば、大きな損害につながるかもしれません。
そうならないために、事前に問い合わせ、いつごろ手続きが完了するか、どの時点が基準となるかを明確にして相続手続きを進めることができれば、と考えています。