前回は、不動産が相続税対策になる背景について紹介しました。
一つの不動産でも、評価のされ方で価値が変わってきます。
市場で流通している価格である、売買価格、土地の路線価、建物の固定資産税評価額などです。
一般に、土地の路線価や建物の固定資産税評価額は時価よりも低いため、現金が不動産へ形を変えることで相続税対策になるのです。
不動産経営の難しさ
前回も説明したように、借金をして相続税対策をする際は不動産投資を行うことが有効であるケースが多いです。
確かに、借金をして得た現金を不動産投資に回せば相続税対策は可能です。
しかし不動産投資は、空室となってしまったり、天変地異などで建物がダメージを受けてしまったりするリスクがあるため、必ず成功するとは限りません。
不動産投資に失敗して出てしまった損失が大きくなり、相続税の負担軽減できた額を上回る可能性もあります。
また、不動産というのは金額が大きい買い物になります。
大きな借金をする理由は、大きな買い物をするために他なりません。
不動産の時価は相続税評価よりも高いため、現金や借入金で不動産を購入することで相続税対策につながります。
しかし、購入する不動産の金額を大きくするということはそれだけ失敗した際のリスクも大きくなるのです。
借金をして規模を大きくすればするほど相続税の負担軽減効果は大きくなります。
しかし、かけたお金の分だけ失敗したときのリスクも大きくなってしまうのです。
賃貸物件は更新投資が必要
賃貸物件の本当の実力が出るのは、築10年を超えてからです。
築浅の時代は入居者に困ることはないでしょう。
また、設備なども新しいため、特段投資の必要がありません。
しかし、築10年を超えたあたりから、「新しい」という肩書きが外れることになります。
建物や設備の魅力、家賃水準、管理の具合、評判などによって、「勝ち組」「負け組」が出てくるのです。
交通の便が良い、悪いというのも借り手からすると大きな判断材料になります。
築10年を超えて、交通の便が悪い賃貸物件と、新築の駅から徒歩10分以内の物件を比較すると、後者に人気が出るのは当たり前です。
前者が優れているとすれば、家賃が割安であるのに設備が整っている、という利点が必要になるのです。
今回のまとめ
築年数の経過とともに、設備が劣化すると、当然人気はなくなります。
ただでさえ時代遅れの設備なのに、更新するお金がないと、見劣りしていくことになります。
外観の見栄えも悪くなり、家賃も上げられず、一旦入居者が退去するとなかなか次の入居者が見当たらない、という事態に陥ります。
稼働率をあげるために家賃を引き下げざるを得ず、それを知った既存入居者が契約更新時に家賃の引き下げを求める悪循環に陥ってしまったりすることもあります。
このように継続的な投資が必要なものなのです。
次回は、事例に戻り、不動産の資金化の難しさについて説明していきます。